藤原雄一郎のクルーズワールド
クルーズで身も心も軽やかに 国内クルーズで何よりの親孝行

騙されたと思ってクルーズに参加してごらん


飛鳥の雄姿

飛鳥のオープンデッキ
私の母は88歳になります。2年ほど前から足が不自由になり、エスカレータも利用できない状況になりました。彼女の名前はとし子さんです。一人暮らしのとし子さんとは毎日「おはようメール」の交換で健康確認をしています。そのいきさつを http://www.inox-tabi.com/mieko/data.htm に記載しています。

話が横道にそれました。とし子さんは旅が好きで、良く親しいお友達と国内旅行を楽しんでいました。人一倍「人に迷惑をかける」ことを嫌うとし子さんは、足が不自由で歩行困難になり、大好きな旅をあきらめました。足が悪いと行動範囲が狭くなってきます。友達とのつきあいも徐々に減ってきました。何だか顔色もすぐれず、元気がありません。一人暮らしも大変なようです。

そこで私は思いきってとし子さんをクルーズに引っ張り出す決心をしました。ある日「騙されたと思ってクルーズに参加しよう。私がぴったり密着して面倒を見るから」としつこく口説き落としついにOKを貰いました。二泊三日の飛鳥による「瀬戸内・壱岐ゆったりクルーズ」です。当日は一人暮らしのとし子さんの家へ車 で行き、そのまま神戸港へとむかいました。

あらかじめ飛鳥には車いすによる乗船のサポートもお願いしておきましたので、神戸港へつくと早速係の人が車いすを準備してくれて、実に手慣れた様子で乗船をすませてくれました。せっかくの楽しいセイルアウエイ(出航)の儀式も残念ながら雨で楽しむことができません。どうなることかと心配しての出航です。 それまで不安が一杯の顔であったとし子さんが、一つの発見をしました。たとえ息子であっても人に迷惑をかけることを極端に嫌うとし子さんは、歩行速度が極端に遅いので、私や周りの人に迷惑をかけるのではと非常に心配し、楽しむどころではなかったのです。

ところが飛鳥の折りたたみ式車いすを私が押して移動すると、そのスピードは当然のことながら私の歩行スピードとなります。とし子さんにとっては久しぶりの快適スピードです。このことを発見して顔色がいっぺんによくなりました。

「これで息子の足手まといにならなくてすむ」と思ったのです。それからとし子さんは完全にクルーズモードに乗り移ることに成功しました。

親孝行ですねと賞賛の嵐


食事が美味しい

元気になったとし子さん
私はとし子さんの顔色が良くなってホッとしました。よし、それでは船内探検だ!と最上階にあがり、各階をとし子さんの車いすを押しながら、くまなく探検しました。そして全体の雰囲気がわかったところで昼食です。その頃には顔色が少し輝きだしていました。

昼食が終わって「指輪つくり教室へでも行こうか」と誘いますと「そんな女の遊びはいらん。輪投げがしたい」といいます。そこで輪投げ会場へ向かいました。 よぼよぼでとても輪投げどころではないのですが、か弱い力で懸命に輪をなげています。しかし残念ながら届きません。何回か順番が回ってきて、やっと一つ得点を得ました。その瞬間、拍手がまきおこりました。

わたしはとし子さんのことで精一杯で他の乗客のことは全く目に入っていませんでした。しかし乗客は懸命に不自由なからだで輪投げにはげむとし子さんを見ていたのです。そして成功したとたんに拍手が巻き起こったのです。思わず胸に熱いものがこみ上げてきました。

輪投げが終わって三時のお茶になりました。最上階で見晴らしのよいビスタラウンジに行きますと皆さんが声をかけてくれます。そして親しく「一緒にお茶を」と誘ってくれます。

乗船して以来、車いすを押す私たち親子とおぼしき組み合わせはよほど目立っていたのでしょう。「親孝行ですね」と数多くの賞賛の声が私に向けられます。するととし子さんはキッとした顔になり、「この子は何もしない子です。それよりお嫁さんが素晴らしく、今回のクルーズもお嫁さんが企画してくれたのですよ」と雄弁に身振り手振りでしゃべり始めました。その顔は光り輝いています。

そして夕食の時間になりました。飛鳥の夕食は指定席で、Yさんご夫婦と一緒になりました。Yさんご夫婦は上品でなんと優しいことでしょう。とし子さんはもう夢中で喋っています。顔には生気がみなぎっています。二日目の夕食ではもう十年来の知り合いのようにうち解けた雰囲気になりました。

そして壱岐を出発する時、天候に恵まれてセイルアウエイも楽しく実施されました。ふと、とし子さんを見ると、いすに腰掛けながら音楽にあわせて手を振っています。足が不自由でなければ私も踊っていたと、大変なお気に入りです。存分にクルーズを楽しんだとし子さんでした。

まだまだ書きたいことは山ほどありますが、とにかく二泊三日の楽しいクルーズはあっという間に終わりました。私はとし子さんに向かって「冥土の土産のつもりでクルーズを誘ったのに、冥土から駆け足で帰ってきたではないの」と憎まれ口をたたきました。

身体が軽いと喜びのメール


今度はクルスマス・クルーズ
さてこのように楽しいクルーズ初体験が終わり、日常の一人暮らしに戻りました。毎朝の生存を確認する「元気ですか?メール」も今までは「私の寿命も長くない」といった暗い内容が見受けられて心配していたのですが、クルーズから帰ると「本当に不思議です。 重かった身体が軽くなり、気持ちもウキウキします」とのメールが来ました。それが何と三ヶ月も続いたのです。

そして「次はいつクルーズに行くの」との催促のメールまで来る始末です。そこで今度は弟を巻き込み、親子三人水入らずの飛鳥クリスマスクルーズに参加することに決定しました。

飛鳥クリスマスクルーズに再び参加さて参加を決定したのはまだ暑い夏でした。そうすると、今度は楽しいクルーズに参加出来ると指折り数えて楽しく待つ毎日となりました。そうです、心はすでに飛鳥に飛んでいるのです。人間は目標が出来ると全ての面で好循環となります。飛鳥に乗る前から気持ちの高ぶりが健康維持に役立っています。

ふたたび飛鳥へ クリスマス・クルーズを満喫


あこがれのタミーさんと!

さていよいよ待ちに待ったクリスマスクルーズがやって来ました。実は私は若干心配していました。初回の印象があまりに強かったために、人間誰しも良い思い出は過大に評価しがちです。

だから二回目の飛鳥は現実と理想の差に落胆するのではないかと心配したのです。しかしその心配は杞憂でした。とし子さんは一歩足を飛鳥に踏み入れた瞬間に「次もまた絶対に来るぞ」と心の中で叫んだといいます。二回目の飛鳥も大満足でした。

何回かクルーズをしているうちに知り合いも出来てきます。その一人のKちゃんとよばれる男の人とすっかり仲良くなり、ワイワイと盛り上がりました。

ここでとても嬉しいハプニングがありました。飛鳥には音楽博士号を持つアメリカ人の美人歌手がいます。その名前をタミー・シャフといいます。歌唱力がしっかりしている上に金髪美人が巧みに美空ひばりや笠置しづ子の歌を歌います。前回の飛鳥で彼女のショウを見たとし子さんは感激して、ショウが終わったあとに握手をして貰いました。その時の手のやわらかさが忘れられないといっていました。

そのタミーさんがクリスマスクルーズではメインのショウをするのです。とし子さんの興奮はいうまでもありません。夜のショウに備えて、昼寝をするというのです。

そしてたっぷり休養して、夜のショウを最前列で見ました。とし子さんは興奮して、私の「ブラボー」という声援にあわせて「いいよ?」と叫んでいます。

ショウが終わって、私はトイレにたちました。そして例のKちゃんと話をしていると弟が血相を変えて飛んで来ました「兄貴なにをしているんや。早くこい」と叫びます。とし子さんに何事かあったのかと飛んでゆくと、何とタミーさんがとし子さんのところへきて話し込んでいるではありませんか。弟が「兄貴なにをしている。早く写真を撮らないか」とさけんでいます。

そこでハッと我にかえり、写真を撮らせてもらいました。とし子さんは「前回の握手をタミーさんが覚えていてくれた」と異常興奮です。私は心からタミーさんにお礼をいました。楽しい楽しい飛鳥のクルーズが終わって、とし子さんの「身体が軽い」が続いたのは言うまでもありません。

今回はビデオも撮影し、とし子さんにプレゼントしましたのでなおさらです。どうですか皆さん!クルーズの元気になる理由を理解して頂けたでしょうか?
執筆者 文● 藤原雄一郎(クルーズコンサルタント)
クルーズの魅力にすっかり取り込まれている私です。
「クルーズの素晴らしさを一人でも多くの人々に伝えたい」そのような気持ちが
感受性を豊かにしてくれます。
夢は大きく「日本のクルーズ人口増加に寄与する」ことです。