藤原雄一郎のクルーズワールド
セレブリティクルーズ『サミット』でいくメキシカンリビエラ
アメリカ・メキシコの地図
一日も早くセレブリティの世界に飛び込みたいとの念願がかなって、メキシカンリビエラ6泊7日のサミットに乗船することになった。ロスでの前泊はただひたすら時差解消の睡眠に費やして、いざターミナルへ!





チェックイン:目立つ赤い帽子に紫の洋服


「50才を過ぎれば女性は思いっきり
人生を楽しむのよ!!」
14時集合を知りながら12時にターミナルに到着したが、すでに大勢の人がチェックインに並んでいる。当然私たちも列の中へと入ってゆく。「乗船前の楽しみは、気持ちの良い仲間を見つけること」と心得ている私たちは、早くも会話の中にうまく入り込んだ。そして話ながらあたりを見渡すと、紫の服に、赤い帽子をかぶった女性の一団があちこちに目立つ。

「あなた達は何者なの?」と集団のひとつに声をかける。「私たちはレッド・ハット・ソサエティなのよ」「そんなの聞いたことが無いけれど・・・」「あらこれは世界中でやってるのよ。日本にもあるはずよ。インターネットで調べて見たら」と70才を越えているとおぼしき女性から「インターネット」の言葉が帰ってくる。

「何だかわからないけれど、あなた達目立つから、写真撮らせてよ」「いいわよ!そのかわり一人につき5ドルだからね。ハッハッハ」とまことに屈託がない。そこで早速一枚パチリと撮影させて貰う。

それからほどなく憧れのサミットの船上の人となった。チェックインの時、話しかけた家族とはその後、船内のあちこちで出合い、ご主人はしきりと難しい話をするので、私たちは彼のことを「哲学者」と名付けた。

憧れのサミット



さて憧れのサミットの感想はといえば、「これはやはりクルーズだ」ということだ。最近のクルーズは時代の流れとはいえ、フリースタイルが定着しつつある。それはそれで気楽で楽しいものではあるが、「少し構えて、自分自身を緊張させて」クルーズに参加することから言うと、少々物足りない。

その点、サミットでは、夕食は伝統的な固定席の二回制であるし、フォーマルナイトにはタキシード着用率こそ低いが、男性であれば黒のスーツが大部分であり、正装の雰囲気が漂う。そして小さな子供たちまで、大人同様に正装を決めこんでいるではないか。子供たちに「大人の社会に出入りするには、このようにするのだよ」と教育をしているようなものだ。とても必要なことだと思う。

日本でも結婚式には子供といえども正装するではないか。このような場がもっと日常的にあれば、マナーや社会人としての振るまいの良き訓練になると思う。その意味で子供連れの多い今回のサミットは大変気に入った。

乗船の時に出合った哲学者はスコットランドのキルト(スカートみたいなの)に身を固め、キリリとしたいでたちである。そして私たちにどうして着物を着ないと迫ってくる。家紋をつけた紋付きを着ろという。「伝統を守ることは大切なことだ。君は日本での教育現場での荒廃を嘆いていたではないか。家紋を付けた着物を正式の場で身につけることこそ、民族に対する教育ではないのか?」そばで奥さんがやきもきして「あなたいい加減にしたら?」ヤレヤレ疲れる。

サミットは大型船であるにもかかわらず、「これでもか!」といったエンターテイメントが少ない変わりに、クルーズの呼び物であるプロダクション・ショウのレベルはすこぶる高い。「大人が、気の置けない人を見つけて楽しい会話をかわす」そのようなクルーズ本来の楽しみを思い起こさせてくれる船だとの印象を持った。

人生50を過ぎたら楽しまなくっちゃ!

さてレッド・ハットにもどろう。この運動の趣旨は「50才を越えた女性が子育てもほぼ終了し、これからは人生を思う存分に楽しもう」とのことで志を同じくする人々が相集う会のようである。今回は本部の呼びかけに応じて、アメリカ人約150名が参加した。この運動の趣旨にセレブリティ・サミットはまさにピッタシと私は思う。

「赤い帽子に紫の服」はとても目立つ。ついつい「レッド・ハット」が縁で話がはずみ、とても親しい雰囲気が出来上がる。私も数多くのレッド・ハットに声をかけ、写真を撮り、「インターネットで日本人に皆さんの楽しみ方を大いに宣伝するからね」と約束した。声をかけた人すべてに共通するのは、とても気さくで顔が輝いていることだ。

「ご主人はどうしたの?」と聞くと「家においてきたわ」と答える。そして「どうしてそんなことを聞くの?」と言った顔つきで、「今朝はねパジャマ・パーティでね。パジャマ姿で大騒ぎしたわ。とっても楽しかった。」と話はドンドン自分たちがどんなに楽しんでいるかに移ってゆく。「3時には私たちのティーパーティがあるけれど、男性は出入り禁止よ」とのたまう。本当に楽しんでいるなとチョッピリ羨ましい。

フォーマルデイが来た。今日はレッドハットに紫の服にお別れだろうと期待していると、どっこい期待は見事に裏切られて、正装用の紫のドレスに艶やかなレッド・ハットが乱舞する。なんとも目立つことだ。家内のミエコがソッと聞くと、平均して十種類の帽子を持ち、今回は四種類の赤い帽子を持参したとのこと。これは筋金入りだ。

エンセナダに上陸した。街をそぞろ歩くと、顔見知りになったレッド・ハットとそこここで出合う。テラス・カフェでレッド・ハットの写真を一枚撮る。「あなた、名前忘れたけれど、これ食べて見ない。美味しいけれど少し辛いわよ」ありがたくほんの少し頂いて「レッド・ハットの日本でのPRにこの写真を役に立てるからね」と早々に退散する。

ショウの呼び物であるプロダクション・ショウを見る。素晴らしい演技に時間を忘れる。あっという間にフィナーレ。観衆は総立ちで拍手を送っている。ふと見ると数多くのレッド・ハットが先頭に立って拍手をしているではないか。確かに彼女たちは全てを忘れてクルーズの楽しみに没頭している。レッド・ハットの面目躍如である。カジノでも赤い帽子が目立つレッド・ハットを何人も見た。

「一生懸命家事に、子育てに汗をかき、その山を越したら50才を超す年齢に到達していた。これからは自分の楽しみを追求するのだ」との趣旨と実際に楽しんでいる姿を見ると、妙に感動する。彼女たちもつかの間の旅を終えると、また良き母、良き妻に戻るのであろう。気分転換に格好の場をセレブリティのサミットは提供したようだ。

やっぱりね!

エレベータでの会話。「ご主人のこと気にならない?」「全然!!」赤い帽子がエレベータを出て行くと、アメリカ人がウインクをして「彼女は家に帰ったら第二のハネムーンさ!」なるほど、なるほど。
別の場所で「ミエコ、実はホームシックにかかって昨日電話したの。5人の子供がいて、ネブラスカは天気が悪く、調子が悪いらしいの。早く家に帰りたいわ」見るところ、まだ小さな子供がいるようだ。やはり子育てを卒業しないと、立派なレッド・ハットになれないようだ。
6泊7日は夢のようにあわただしく過ぎ去った。「女性は人生50才を過ぎたら、思う存分楽しまなくっちゃ」という声がいつまでも耳の奥底に止まって離れない。クルーズを眺める視点がひとつ増えたような気がする。
更新日:2006年2月22日
執筆者 文● 藤原雄一郎(PTSクルーズアドバイザ:クルーズコンサルタント)
クルーズの魅力にすっかり取り込まれている私です。
「クルーズの素晴らしさを一人でも多くの人々に伝えたい」そのような気持ちが
感受性を豊かにしてくれます。
夢は大きく「日本のクルーズ人口増加に寄与する」ことです。